深い森の中・・・。

少女が住んでいる森だ・・・・。

 

少女の周りには十数人の黒装束の兵隊たちが倒れていた。

その真ん中に立つ彼女の栗色の髪が揺れる。

何人か逃げられた・・・そう、少女は舌打ちした。

少女、レオナはゆっくりと周りを見渡す。

この様子だと、おそらく邪気、ZEROが動き始めたのだろう・・。

たった20名そこそこの刺客で私を始末しようなんて・・・。

 

「・・・・なめられたものね。」

 

最後の心情だけ、彼女は口に出した。

この位の勢力で自分を倒せると思われていること自体に腹が立つ。

彼女は周囲を見渡した。

倒れている兵士たちは全て絶命している。

何人か逃げられはしたが、彼らも相当深手を負っているはず・・・。

当然だ。

彼女は敵に容赦はしない。

軽く息を吐き、彼女は長い髪をかき上げた。

 

ふと・・・彼女は違和感を感じた。

そう、なにかがぽっかりと抜けているような感覚。

そうだ、いつも傍にいるはずの彼がいないのだ。

金色の美しい羽をもった・・・・・

「・・・クロード?」

小さな声で鳥の名前を呼んでみた。

少女のよく通る声が響く。

しかし、いつも聞こえるはずの羽音が聞こえない。

いつもなら名前を呼んだらすぐに飛んでくるはずなのに・・・。

彼女のなかで不安がどんどん渦巻いていく。

「クロード!!!」

大きな声で名を叫ぶ。何回も何回も。しかし、羽音は聞こえない。

あたりは、しんと静まりかえった・・・。

彼女の心臓の鼓動が早くなる。

手に汗をかいているのが分かる。

 

いやだ・・・まさか、まさか・・・!

 

少女の栗色の瞳が恐怖にゆれた。

全身がみるみるうちに震えだす・・・・。

 

まさか・・・・・そんな、嫌だ・・・!!

 

今、レオナは確信した。

自分を襲ったあの刺客が持つ意味を。

1つはレオナを倒すため・・・しかし、もし彼女を倒すことが困難な場合は・・・。

 

クロードが・・・攫われた!

奴らは知っているのだ。

レオナにとって、もっとも大切なものがあの鳥であるということを・・・・。

 

あの逃げ延びた刺客だ。

レオナは唇を血が出る位に噛み締める。

私が全員倒していたら・・・と後悔の気持ちが胸を満たす。

しかし、彼女は大きく頭を振った。

そして家の中に入るとベッドの下にあらかじめ用意してあった袋を取り出すと家を出た。

用意していたのだ・・・いつでもこの家を出れるように。

彼女は険しい瞳で空を見上げた。

 

行くべきところは、分かっている・・・。

いや、分かる。

 

 

首都だ。

 

 

 

 

第四章 〜思惑〜  Fin